空き家が増え続け問題になっている。
住宅ローン控除と空き家問題は、一見無関係ともおもえるが、ローン控除は、将来の空き家問題を増幅することにならないのだろうか。
空き家問題
政府広報にあるように、空き家を放置すると、倒壊の危険、景観、不法侵入など様々な悪影響がある。対策として「空家法」が制定された。
税制からみる住宅政策
空き家の原因を詳細に論ずる知識はないが、核家族化による家族構成の変化と、解体に要する費用負担が大きいことは容易に想像できる。
もう一つ忘れてならないのは、国の住宅政策が根底にあるように思われる。
住宅取得促進税制
30年間、税理士を生業としてきたが、この仕事を始めた当初から、詳細は変わっても、住宅(特に新築住宅)を取得すると税金が安くなるという税制上の特典があった。調べてみると、昭和47年の「住宅取得控除」から始まったようだ。
当初の制度は、現在のようなローン控除ではなかったので、ローンを組むことが要件ではなかった。
国土交通省にみる住宅政策
住宅ローン控除は身近な制度であり、国の住宅政策の考え方がよくわかる。
令和6年改正について国土交通省はローン控除について「借入限度額について、子育て世帯・若者夫婦世帯が令和6年に入居する場合には一定の上乗せ措置を講ずる」と説明している。
これは、「借金して住宅を取得する」ことを応援するということで、子育て世代、若者夫婦に、家賃補助や安価の賃貸住宅を提供するという視点はない。
深刻なマンション問題
特に深刻になるのが、マンションの開き部屋問題である。
住宅ローンを使い、ローン控除の適用受けて、マンションを取得した人は多いし、これからも増加すると思われる。
国土交通省「マンションを取り巻く現状について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001598520.pdf
国土交通省も建物の老朽化、居住者の高齢化という「二つの老い」が進行している状況を大きな問題として認識している。
このまま推移すれば、空き部屋が増加することは容易に想像できる。区分所有であり、解体費用も多額になることから、戸建て住宅より、より問題は深刻である。
チグハグ感が拭えない
きわめて単純な話であるが、「持ち家」であるから、空き家が生ずる。現在の子育て世代は、将来の老人世帯であり、ローンを組んで住宅取得を推奨した結果として、将来の空き家問題が増幅するのは、自然のことのように思える。
そもそも住宅ローン控除は、税額控除であり、ローンを組んで、住宅を取得する所得がある人が対象である。「子育て世代、若者夫婦」といっても、恩恵を受けるのは限られた人だけである。
ローン控除で住宅取得を推奨しながら、空き家については、適正に管理されていなければ固定資産税の小規模住宅特例が解除されるので、固定資産税が6倍になるケースもでてくる。
政策全体のチグハグ感が拭えない。