「令和7年税制改正大綱」によると「子育て支援政策税制」として、23歳未満の扶養親族がいる場合には、生命保険料控除を2万円増額する(令和8年から)とある。
これは、農水省、厚労省、経産省、こども家庭庁の共同税制改正要望で、同一内容が前年の金融庁改正要望として提出されている。令和7年では「子育て支援」ということで、めでたく大綱に盛り込まれたものである。
この件は、「税制改正要望」、令和6年金融庁「税制改正要望」にびっくりに記載したので、そちらを参照いただきたい。この種の政策的控除については、過去の税制調査会は、廃止も含めた見直しが必要といていた。詳細は「生命保険料控除への疑問」を参照いただきたい。
税制改正大綱の増減収見込によると、これによる減収は250億である。
税金をおまけするのも、予算として支出するのも財政上は同じである。子育て支援なら、250億は、ほかにいくらでも使い道はありそうだ。
そもそも税金をおまけしてまで生命保険加入を推奨する理由が、わからない。ましてや子育て支援にどう関係するのか、なお不明である。
生命保険料控除2万円増額といっても所得控除であり、政策目的とされる「子育て世代」の年収を考えると、税額にして、せいぜい2万円の10%か20%、年間2千円、4千円である。この金額が、生命保険加入のインセンティブになるとは、考えにくい。
この改正が実現すると、同じ保険料でも23歳未満の扶養親族の有無で、生命保険料控除の金額が違ってくる。扶養の有無は「扶養控除等申告書」で判定できるにしても、計算結果が、扶養の有無で分岐するので、「保険料控除申告書」は、ますます複雑になる。どうもお役人の考えることは理解できない。