昨年(2018年)11月30日に内閣官房、公正取引委員会など5省庁連名で、「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」が公表されている。
税率アップを目前にして、税込み表示をしている商店街のお店や飲食店の方は、一度目を通していただいたほうがよい。
この文書は非常に興味深い文書なので、内容を簡単にご紹介する。以下、文章は私なりに要約している。
価格設定に関する考え方
我が国では消費税の導入や税率アップによって、一律・一斉に価格が引き上げられるという認識が定着しているが、欧州では、事業者が独自の判断で、税込み価格の値上げを行うことがないので、税率引き上げ前後に駆け込み需要や反動減がない。
消費税転嫁対策特別措置法によって「消費税はいただいておりません」「消費税還元セール」などの表現は禁止されている。しかし、直接消費税と関連した形での広告や価格設定を禁じたもので、事業者が独自に10月1日以後は()%値下げなどと表示することは問題ない。
その他
消費税引き上げ前に事実に反して「今だけお得」といった表現で駆け込み購入を煽る行為は景品表示法に違反する可能性がある。
「また、従来、消費税率の引上げを理由として、それ以上の値上げを⾏うことは「便乗値上げ」として抑制を求めてきましたが、これは消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを⾏うなど経営判断に基づく⾃由な価格設定を⾏うことを何ら妨げるものではありません。」
解説
我が国では消費税率が上がるとあらゆる商品が一律・一斉に価格が上昇すると思い込んでいる消費者が多い。事実としてその傾向は否定できないが、消費税の性格からすれば、最終消費額が増加すれば、それだけ税収が上がる仕組みであり、これは転嫁対策特別措置法などによって、政府がすすめてきた政策に起因するところが多いと思われる。
ところが「一律・一斉値上げ」が行き過ぎると駆け込み需要やその反動で極端な消費者行動を招きやすく、消費が冷え込むと、税率をアップしても、税収は伸びないという結果を招くこととなる。この文書は、これを警戒して出したものであろう。
法律上の消費税の納税義務者はあくまで事業者であって、消費者ではない。しかし、消費税は消費者が負担するという合意(誤解ともいえる)が、なければ事業者は転嫁できない。消費税は難しい税金である。この難しさが表れたのがこの文書といえよう。
なお最後の一文「消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを⾏うなど経営判断に基づく⾃由な価格設定を⾏うことを何ら妨げるものではありません。」は注目されてよい。これを「税率アップ前に値上げして、税率アップ後には2%割引セールをやったほうがよい」と読みたくなってしまうのは私だけだろうか。