消費税ってどんな税-非課税について

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消費税の非課税制度は、誤解の多い制度です。非課税なら安くなるという単純なものではありません。

 

身近なようで、意外と知られていないのが、消費税。議論の前に、まず正確に知って欲しいというのが、私の願いです。

非課税でも消費者の税負担はゼロにはならない

「食料品、生活必需品などは、非課税に」という声を聞きます。これは「非課税」になれば、消費者の税負担はなくなるということを前提にしているのだと思います。消費税は事業者(売り手)を納税義務者とし、最終負担者を消費者とするように設計された税です。

下記記事をご参照ください。
・納税者と納税義務者
・何に消費税がかかるのか
・消費税を消費者が負担する仕組み

非課税で税負担がなくなるという誤解

非課税を求める方は、仮にコメが非課税となれば、現在5キロ2160円(本体2000円税160円)の販売価格が、2000円になると考えているのだと思います。ところが、こうならないであろうことは、税の専門家にとって、至極当然のことです。

なぜならば、種苗や機械、資材、燃料費、梱包輸送コストなど、すべてが、課税の対象であって、販売価格に税として転嫁できなければ、価格そのものを値上げせざるをえないからです。したがって、コメが非課税になれば店頭価格表示から消費税の文字が消えるだけで、2160円より安くなるという保証はどこにもありません。

したがって、生産者やスーパーなどが、利益を削って販売しないかぎり、消費者には、隠れた消費税負担が生じます。

消費税の非課税制度

消費税法第6条「国内において行われる資産の譲渡等のうち別表第一に掲げるものには、消費税を課さない」

「もの」は「モノ=物」ではないことにご注意ください。消費税はモノを課税対象とする税ではないのです。

非課税とされるものは、消費税という性格上課税になじまないものと政策的配慮によるものがあるといわれています。

消費税創設時から、以後の改正で、社会福祉関係、助産、火葬・埋葬料、身体障害者用物品、教育、教科書、住宅家賃などが追加されてきました。

消費税はモノにかかる税ではありません。ある取引(経済行為)が、非課税になると、売り手(お金をもらう側)が消費者と同様の立場におかれ消費税を負担することになります。

アパート経営を例に考えてみます。現在住宅の貸し付けは非課税です。非課税ですから「消費税」という名目の家賃請求はできません。しかし、管理費や修繕費は課税なので、消費税分が上乗せされています。住宅家賃が課税であれば、自らの消費税申告時に、これらの消費税相当額は仕入税額控除して取り戻すことができなす。ところが住宅家賃は非課税なので、この消費税相当額はアパート経営者の負担となります。負担したくなければ、家賃を上げるしかありません。

零細企業と税理士の負担

非課税が増えると税収は減ることは間違いありません。消費者サイドからみても、非課税で安くなるということには疑問符がつきます。消費税の非課税制度についての論点、問題点は学者の方も指摘しているところです。

一方、実際に消費税の申告納付をする零細事業者やその援助をする税理士の立場からの負担に関する見解などは、ほとんど目にしません。ここで、その問題を考えてみます。

記帳が煩雑

消費税は、一定期間分をまとめて申告します。ほとんどの零細事業者は一年分です。これを課税期間といいます。消費税用の特別な記帳をするわけではありませんが、消費税の申告のためには、記帳が必要です。ちいさな会社のほとんどが、会計ソフトに入力するか、税理士に記帳代行を依頼しています。

会計ソフトの仕様によって、多少違いはあっても、「非課税取引」は、課税分と区分する必要があります。これが思いのほか大変なのは、実務を経験した人でないと理解できないと思います。しかも支出項目で「非課税」チェックを見逃すと、「仕入控除過大」で、意図しない消費税の過少申告となるので、税理士は非常に神経をつかいます。

判定の困難と煩雑さ

消費税基本通達というものがあります。通達は、国税庁長官が、各税務署に対し、税の執行を公平に(全国どこでも同じ)するために発する文書ですが、実務上は、事実上「法令」と同様になっています。この問題点はさておき、消費税基本通達は、「非課税」について、66本も項目あります。

実体経済は複雑で単に「住宅貸し付け」は非課税と法律が規定しても判断に困る事例は山ほどでてきます。

「住宅として貸したつもりが、実際は事務所に使っていた」「アパートと駐車場をセットで貸している」「駐車場なのか、資材置き場の土地貸付なのかわからない」、「名目は家賃となっているが、サービスが付属する高齢者住宅はどうか」などなどです。

税理士としては、通達の判断に従っていれば、税務署から否認されることはないという安心感はありますが、それでよいのかという疑問もあるし、通達に書いていない事例も出てきます。

間違いを指摘されると、税理士の責任ということになるので、非常に神経を使うことになります。

まとめ

非課税項目が増えると税収は減る
非課税となっても消費者には隠れた消費税負担生ずる
非課税が増えると事務負担が増加する