身近なようで、意外と知られていないのが、消費税。議論の前に、まず正確に知って欲しいというのが、私の願いです。
消費税は、事業者を納税義務者としながら、最終的な負担者を消費者とするよう設計されています。その中心的な条文が28条(課税標準)と30条(仕入税額控除)です。やや専門的ですが、消費税を理解するためは、避ける事ができない条文です。
課税標準(第28条)
「課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、収受すべき一切の金銭・・・の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき・・・消費税に相当する額を含まない)とする。」
課税標準とは、税金の対象となる具体的な数値をいいます。消費税法の規定では、消費税を計算する根拠となる課税標準は、対価の額(販売価格)であり、消費税相当額を含まない金額とすると規定しています。非常に回りくどい感じがしますが、「課税標準は税込販売価格から、消費税相当分を差引した金額」ということです。別の言い方をすると「税込販売価格から税抜き金額を計算し、その金額に税率を掛けたものが消費税額ということになります。
この規定によって、売り手の主観とは関係なく、「相手からもらった金額」は、すべて消費税を含むものとみなされることになります。定価で売ってもディスカウントしても、実際にお客さんからもらった金額を元に消費税相当額を計算するということです。税抜き価格+消費税というレシートを見慣れていますが、消費税法の規定は逆です。販売価格に110分の100(税率10%として)が、税抜き価格を計算すると規定しています。
仕入税額控除(第30条)
「事業者が、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から、課税仕入れに係る消費税額をにつき課された又は課されるべき消費税額を控除する。」
仕入に係る消費税額は、支払い対価(税込対価)の額に110分の10を掛けて算出することとされています。見慣れたレシート(本体価格プラス税)とは、違いますね。
(注)条文では国税分と地方消費税がわかれるので、110分の7.8となっている)
消費税申告書は、このとおりの構造です。当たり前ですが。
(A)課税標準額を計算する 売上総額(税込)×100÷110(税率10%として)
(B)消費税額を計算する (A)×税率
(C)仕入控除税額を計算する 仕入対価(税込総額)×10÷110
(D)納付税額を計算する (B)-(C)
実際に転嫁できるか否かは「力関係」
ほとんどの場合、消費税は、消費者に転嫁され、消費者が負担しているのが、実情でしょう。しかし、実際に転嫁できるかどうかは、消費者の動向や他店との競争によって、違ってきます。
消費税法第5条は「事業者は国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により消費税を納める義務がある。」と規定していますから、転嫁できなければ消費税法の創設趣旨に反して、事業者の負担となってしまいます。
だから零細事業者にとっては、消費税を「売上税」のように感じることも多いのが実情です。
特に「買い控え」という消費者の行動には手の打ちようがありません。こうなると、大手スーパーでさえも、転嫁が困難とう事態が生じます。
以上の説明で、消費税は難しいなと思っていただけたら結構です。