原題は「TAXING THE RICH」で2016年発行。邦訳版の出版は2018年。
富裕層への課税については、様々な考え方、意見がある。中には、あからさまに、富裕層への課税を回避するためのエセ「理論」、階級国家論から、そもそも国家は、支配階級の課税に積極的であるはずがないという、「割り切った」ものもある。
しかし、現実に政府が富裕層への課税に踏み込んだときがある。現在の我々には、信じられないことであるが、第二次大戦の戦中、戦後の一時期、アメリカ、イギリス、イタリアの所得税最高税率は、90%を超えていた。そして、1980年代から、また税率は、下がってきた。相続税も同様であり、戦争を契機として、累進税率は上昇し、下がった。
第1部「課税をめぐる理論」
第2部「政府はどのようなときに富裕層に課税してきたか」
第3部「なぜ各国政府は富裕層に課税してきたか」
第1部は「税」特に「富裕層課税」についての様々な考え方「理論」についてであり、第2部は、累進課税の2世紀に、わたる各国の歴史である。
第3部は、第1部、第2部を受けて結論的な部分であり、過去の富裕層課税は、「富の徴兵」であり、戦争テクノロジーの変化によって、富の徴兵としての富裕層への課税が、今後は起こらないといった趣旨のことが語られる。富裕層課税は、戦争が契機の一種の「平等要求」によって、実現したものであり、戦争テクノロジ-の変化から、「国民皆兵」的な戦争の時代は終わったことから、「富の徴兵」を根拠とした富裕層課税が、今後は起こりえない(困難)であるとする。
第3部は、「人びとを平等に扱うための三つの方法」「今日の人びとが望む最高税率」「富裕層課税をめぐるこれからの議論」の三つの章である。
「これからの課税をめぐる議論は、人々の平等な扱いの意味をどう理解するかで決まってくる。」という。なにが「平等」で、なにが「公平」か、といっても、ものごとは簡単ではない。
うすっぺらな議論ではなく、じっくり考えるための材料を豊富に提供してくれる本である。
