インボイスは、事業者が納める消費税を正確に計算するために必要だという。
この根底には「益税」論がある。免税事業者や簡易課税事業者など、「消費税をもらっておきながら、納税しない、または一部しか納税しない」これは公正さを欠く「益税」だという。
だが、これは、事業者が、消費税分を全額転嫁できていることが前提の主張である。
はたして、これら小規模事業者は、消費税相当額を全額転嫁できているのだろうか。もっと単純にいえば消費税をもらっているのだろうか。
フリーランスなどの免税事業者
「公正論者」が、まっ先に、やり玉に上げるのは、建設業の一人親方や、フリーのライターなどで、免税でとおしている事業者である。これらの人の中には、請求書に「消費税」と明記している人もいる。
これらの人は、消費税を転嫁できているのだろうか。新聞記事によれば、声優のギャラの最低ランクは、「1本1万5千円」が20年以上変わっていないという。
飲食店などでは
町の飲食店などは、値上げすれば売上が減ると考え、自分で消費税分を負担するつもりで、価格設定しているところも多いと思われる。私の周りをみても、税率がアップしても、価格はそのままという店も多い。これらの店主にとって、消費税は、感覚的には、第二の所得税である。しかも、おそらく所得税よりも金額は大きい。
転嫁できる条件は
上記の例から考えると、消費税が転嫁できるのは、自己に価格決定権があること、相手(顧客)が、その価格を受け入れる(受け入れざるをえない)場合に限られる。
安易に益税というなかれ
現行消費税法は、販売対価の額(いくらもらったか)を基準として、消費税額を計算することになっており、レシートの税は販売価格の一部である。仮に請求書等の消費税という項目があっても、転嫁できているとは限らないのである。安易に益税というなかれ。