税務統計を読むー消費税の納税者数

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国税庁の統計情報サイトには、膨大なデータがある。税理士を廃業するまでは、これらを見る余裕もなかったが、これは宝の山である。しかし、数字の羅列をみても、おもしろくない。興味をひくところから、「読んで」みたい。

消費税の納税者

消費税の納税義務者は「事業者」であって、消費者ではない。実際にどのくらいの会社(及び個人事業者)が、税務署に申告しているのだろうか。

令和4年消費税申告実績数
区分個人(人)法人(社)合計税額(百万円)
納税申告1,012,8141,850,3992,863,21320,096,124
還付申告61,345187,891249,2367,093,733
合計1,074,1592,038,2903,112,44913,002,449
出典:国税庁 課税統計 税額欄は、納税額から還付額を差し引きした。

消費者は納税義務者ではない「消費税」

消費税法は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等(売上のこと)に消費税を課する。」と定め、事業者とは「個人事業者及び法人をいう」としている。消費税は「消費」に課税するものでなく「消費者」は、納税義務者でもない。

実際に税務署に消費税の申告書を提出している者は、個人、法人を合わせて、310万人(社)ほどである。

還付申告

還付申告件数、金額をみるとビックリするかもしれない。還付とは、税金が戻ることである。

還付申告の多くは、輸出企業のものである。消費税法では、輸出は免税(ゼロ税率=売上はゼロとなる)であり、仕入、部品調達等の消費税相当額が「仕入控除」として差し引きされるので、計算結果がマイナスとなり、申告すると還付される。

その他にも、売上を上回るような大規模設備投資など「仕入」が多ければ還付申告となる。

税関分(もう一つの消費税)

あまり知られていないが外国貨物(輸入品)を引き取る者も消費税の納税義務者となり、税関で納付する。こちらは、事業者という限定はない。海外旅行者のお土産も、合計額が20万円を超えると課税される。余談ながら、もらったもの(タダであっても)でも課税される。

令和4年消費税(税関分)
件数税額(百万円)
18,593,6379,070,489
出典:国税庁 課税統計

輸入時の消費税はどうなる

個人のお土産品などは、その人の負担となっておしまいである。
企業が輸入時に税関で支払った消費税は、輸入企業の消費税申告時に国内仕入の仕入税額控除と同じに、売上分の消費税から控除される。輸入企業にとっては、一時的な立替払いのようなものである。

ひとこと

名称は「消費税」でありながら、納税義務者は、消費者でなく事業者である。ほとんどの「消費者」はそれを知らない。レシートの「税」がそのまま税務署に納付されていると思っている人がほとんである。税金の仕組みを知った上で、税金のあり方を決めるべきである。

輸出還付については、「税の専門家」である税理士も、ほとんど疑問をいだかない。しかし、これは諸外国から「輸出奨励金」と評価されないのだろうか。