国税庁の統計情報サイトには、膨大なデータがある。税理士を廃業するまでは、これらを見る余裕もなかったが、これは宝の山である。しかし、数字の羅列をみても、おもしろくない。興味をひくところから、「読んで」みたい。
高額役員給与の登場
ピケティ「21世紀の資本」によると、アメリカではトップ千分位(上位0.1%)の所得シェアが、数十年で、2%から10%近くまで拡大した、その原因の一つが、超高額給与にあるという。日本でも超高額給与(スーパー経営者)は、登場してきているのだろうか。
日本の高額給与
租税統計年報の申告所得税「所得階級別人員」から、給与所得者に分類された人の令和4年と10年前である平成26年の比較である。「一億円以下」は、5000万円以上1億円以下なので、超高額とまでは、言えないかもしれないが掲出した。いずれも増加している。
10年前との対比であるが、途中の年度をみても、増加傾向にあることが見て取れる。
所得 | 平成26年 | 令和4年 | 増加数 |
1億円以下 | 25,006人 | 33,360人 | 8,354 |
2億円〃 | 5,006人 | 7,464人 | 2,458 |
5億円〃 | 1,164人 | 1,818人 | 1,818 |
10億円〃 | 161人 | 247人 | 86 |
20億円〃 | 40人 | 79人 | 39 |
50億円〃 | 8人 | 18人 | 10 |
東洋経済オンライン2022年高額報酬ランキングでは、20億円以上50億円以下が1人、10億円以上20億円以下が5人、5億円以上10億円以下が20人となっている。これは有価証券報告書出によって明らかになる上場企業のみであるから、むしろ非上場の企業に、高額報酬を得ている経営者がいるようである。
カルロスゴーン氏の16億に驚いた時(2018年)から、さほど経過していないが、日本でもスーパー経営者は、登場しつつある。
ひとこと
平成18年改正で、法人税法は、役員報酬、賞与、退職金という区分をとらず、まとめて「役員給与」としたが、改正前と同様に「不相当に高額な部分」の損金不算入規定は、そのままである。条文では「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、損金の額に算入しない。」としている。
この趣旨は「実質は利益処分にあたるものを給与の名目で役員に給付する傾向がある」(最判昭和56年7月1日)ため、「隠れた利益処分」への対処であるという。
いくらからという線引きはできないが、高額役員給与は、どう考えても利益処分(利益分配)である。
税実務では、この高額給与は、どのようにあつかわれているのであろうか。