税務統計を読むー消費税免税事業者の数

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国税庁の統計情報サイトには、膨大なデータがある。宝の山である。数字の羅列をみても、おもしろくないので、興味をひくところから、「読んで」みたい。今回は消費税の免税事業者の数についてである。

消費税の免税事業者

消費税には、「事業者免税制度」がある。基準期間(前々年)の売上が1千万以下の事業者は消費税の納付を免除するという制度である。
免税事業者は、批判にさらされることが多い。しかし、その範囲はともかくとして、事業者免税は必須の制度である。
「消費税ネコババ論について」などで書いてきたので、参考にしていただきたい。

免税事業者はどれだけいるか

免税事業者の直接的な統計は存在しないが、所得税、法人税の申告数と消費税の申告数から、「免税事業者」の数を推定することができる。

所得税の申告者

所得の種類申告者数(人)
事業3,790,835
不動産1,538,011
5,655,831
個人計10,984,677
出展:税務統計令和4年 申告所得税 所得階級別人員

複数の種類の所得がある人もいるが、上記は「主たる所得」で、カウントしているので、ほぼ申告者の実数と思われる。

法人税の申告数

申告法人数2,922,972
出展:税務統計令和4年 法人税

消費税法上の事業者の範囲は広い

消費税法上は、「国内において事業者が行った資産の譲渡等(売上のこと)に消費税を課す」とし、事業者とは「個人事業者及び法人をいう」としている。

消費税法の「事業者」の範囲は広く、対価を得て(お金をもらって)継続反復して行えば、「事業」であり、それを行う者は「事業者」となる。それが副業であっても「事業」であり「事業者」となる。

「自己の計算において独立して事業を行う者」が事業となるので、副業で行っているWEBコンテンツ制作やデリバリーサービスの配達も継続反復して行えば事業である。

所得申告者と消費税申告者の差

所得税、法人税の申告の申告者数と、消費税の申告者の数の差をみると、消費税免税事業者の数をおおまかに推定することができる。

区分所得申告数(A)消費税申告数(B)差(A-B)
個人10,984,6771,074,1599,910,518
法人2,922,9722,038,290884,682
13,907,6492,038,29010,795,200
出展:税務統計令和4年 申告所得税 所得階級別人員、法人税 法人数、消費税 課税状況
 個人の申告数は、事業所得、不動産所得、雑所得の合計である。

免税事業者は600万を超える?

法人は、消費税法上事業者とされるので、法人数と消費税申告の差である80万(社)が、免税事業者と判断できる。

事業所得であっても、社会保険診療等、消費税法で非課税とされる事業もあるが、非課税売上のみの事業者は、さほど多いとも思えない。

不動産所得者では、土地の貸し付け、住宅の貸し付けは、消費税法では非課税である。非課税分である土地、住宅(賃貸アパート、マンション)と、課税分の貸しビル、駐車場が、半々と仮定する。

判断に困るのが雑所得であるが、420万人が所得200万以下であり、「事業」に該当しないとして除外する。

以上の仮定で計算すると消費税法9条(事業者免税)適用者は、法人80万、個人580万人となる。

ひとこと

免税事業者とは消費税法9条によって「消費税を納める義務を免除する。」こととされた事業者である。「納税義務があるのに納付を免除される」まことに奇妙な規定と言わざるを得ない。消費税を実際に申告納付している納税義務者は、およそ300万。「納税義務」がありながら「免除」の対象となっている人が倍の600万。不思議な税である。ここに消費税という税の性格があらわれている。

消費税法は、事業者を納税義務者とし、「対価の額」(売上金額)を基準とし、消費税額を計算する仕組みである。当事者の意思は関係なしで消費税を含まない売上は存在しない。
この仕組みである限り、事業者免税は必須の制度である。