減税に期待する人は、食品税率1%で、現在108円のものが101円になると思い込んでいる。ところが、そこまで値下がりするとは思えない。そう考える理由はいくつかある。
減税は価格下げ圧力が弱い
実施されるとすれば、日本では税率下げは初めてである。税率がアップするときは、増税分を上乗せしないと、利益に食い込むことになる。しかし、減税は価格下げ圧力が弱い。値下げしなくても売れるならば、できれば値下げしたくない、また小幅の値下げにしたいというのが、企業経営者の本音であろう。競合他店の動向をみながら価格設定をやっていくことになると思われる。またシステム改修費用などは、当然価格に転嫁したいはずである。
零細業者は値下げする余裕がない
上記は大手スーパーのはなしである。街の弁当屋さんなどは、税率が8%から1%になっても、値下げする余裕などないというのが、実情であろう。街の弁当屋さんや惣菜屋さんは、円高による食品高騰、ナフサ不足による容器の高騰など、経営がピンチであることは、テレビでも報道されているとおりある。店主や家族従事者の賃金を最低賃金で見積もれば、かなりの店が赤字であろう。それでも消費税は、払わなければならない。
値下げなど、とんでもないというのが実情であろう。
半分の企業がコスト増を価格転嫁できていない
中小企業庁の価格転嫁調査結果(令和8年3月)によれば、コスト増に対する価格転嫁率は全体で54.2%であり、食品製造業では59.5%である。食品製造業では4割の企業がコスト上昇分を価格転嫁できていないという回答である。
価格転嫁できていないとは、コスト上昇分にみあった、価格設定ができない、値上げしたくてもできないということである。この場合、消費税は、これらの企業の負担となっている。税率が1%となれば「一息つける」という状態であり、値下げしたくないのは、当然ともいえる。
減税前の駆け込み値上げ
減税実施の4月1日になれば、「下がって当然」という声が起きることは、当然予測できる。今のうちに値上げしておいて、減税に対処しようとするのは、経営者として当然の判断である。レシートの「税」だけみて、減税効果があったと思ってはいけない。 コスト上昇分を価格転嫁できていないという回答が半分近い現状である。これを「便乗値上げ」などと非難しても始まらない。
長期をでみないとわからない
減税が4月1日に実施されると、「今日から食料品1%」といったテレビニュースが、溢れかえる。当然大手スーパーなどは、インタビューで「減税で値下げしました」という答えをする。しかし、減税にみあうだけ、価格が下がったかどうかは、一定期間を観測しないと答えはでない。
企業サイドからみれば、価格転嫁できていない現状や、システム改修費も、価格転嫁(値上げ)で回収しなければならない。4月だけみて、減税の効果を語ることはできない。
以上が、減税(食品1%)によって、さほど価格が下がらないと考える理由である。1年5兆円の税収減は、誰のふところに入るのだろうか。
