国税庁は、1月4日に来年(2025年)1月から「申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わないこととしました。」と発表した。収受印が押された「控え」は、信頼ある文書として広く利用されてきた。ステークフォルダーは多い。影響は多方面にわたる。収受印に要するコストは相当なものだと推測できるが、なぜ一方的な「通知」で廃止できるのだろうか。調べてみると「収受印」は慣例で法律的な根拠はないようだ。
そもそも「収受印」とは何か
収受印は、行政庁が収受した文書に押すものであり、本来「控え」に、押すものではないようだ。
「文書管理規定」で検索すると自治体の「公文書管理規程」がヒットする。どの自治体も、ほとんど内容は同じである。一例として神戸市「文書管理規程」(訓令)では、(到達した文書の取扱い)について、下記のように記載されていた。
「(2)文書の余白、封筒その他の適当な箇所に様式による収受印(以下単に「収受印」という。)を押し、文書収配簿に所要事項を記録すること。ただし、次に掲げるものについては、収受印及び記録を省略することができる。」
以上のように、本来、収受印は、行政庁に提出された文書(すなわち「正」)に押捺するものである。
今回の問題である「控え」の収受印の根拠はわからない。しかし、税務署に限らず、行政庁サイドとしては、申請者(申告者)から、文書を提出したこと、その日付を証する書面の交付を求められた場合、その要求に応ずることは必要であると判断し、いちばん簡便な方法として、提出文書の「写し」に収受日付印を押し返却する方法をとってきたものが、慣例として定着したのでないかと思われる。
「公文書収受規程」の必要性
これまで、収受印の押された申告書の控えは、所得や事業の状況を証明(説明)する信頼性の高い文書として、利用されてきた現実がある。
どの行政庁にも、文書収受に関する規程は存在するはずである。しかし、これらの規程は、収受した側の取り扱いであり、申請者などの国民サイドの目線が存在しないようである。
収受印はこれまで「慣例」であり、法律的な位置づけは明確ではなかったとしても、行政庁は、申請者(申告者)から、文書を提出したこと、その日付を証する書面(いわゆる電磁的記録を含む)の交付を求められた場合、その要求に応ずることは、当然である。
政府は「書面、押印、対面」の見直し、廃止を掲げているが、デジタル時代に、ふさわしい「収受印」や「控え」のあり方を検討し、各行政庁統一の公文書収受手続きを定めるべきであろう。