インボイス制度から2年。フリーランスなど小規模事業者への影響は、甚大である。
問題点を報道する新聞記事もあるが、インボイス制度については、「消費税額を取引先に正しく伝える制度(朝日)」「納税額の正確な計算という名目だが(東京)」となっており、インボイスにより「当事者が過酷な状況に追い込まれる」「納税額が増える」という視点であり、消費税の本質を理解しているとは言いがたい。
「消費税」は「売上税」であり弱者が負担する
消費税は「売上」にかかる税である。消費税相当額を価格に転嫁できようが、できまいが、おかまいなしで、消費税法上は「課税売上」となり、消費税をもらわない売上は存在しない。自由主義経済(市場経済)において、消費税が転嫁できるか否かは、力関係以外のなにものでもない。したがって、経済外の力(法律による強制など)が働かない限り、消費税は常に弱者が負担することになる。
もちろん自由経済なので、強者である大企業でも、競争上、消費税相当額を転嫁できないという事態もある。しかし「消費税は弱者が負担することになる」という傾向は変わらない。
スーパーで買い物する消費者は、弱者なので、消費税を負担する。仕事をもらう立場のフリーランスは弱者なので、消費税を負担することになる。これは、この税の宿命ともいえる。
影響を受けるのは当事者だけではない
インボイス制度導入で、やむをえず「課税事業者」を選択した人は、およそ92万人である。
「インボイス制度を考えるフリーランスの会」によれば、インボイス未登録を理由として、値引き要求や取引から排除された人が相当数ある。
しかし、この制度によって、廃業に追い込まれかねない職種は多岐にわたり、当然国民生活に多大な影響があり、国民みんなの問題である。
消費税の仕組みを知ってもらうこと
とはいっても、直接影響を受けるのは、社会全体からみれば「ごく少数」であり、多くの国民にとって「他人事」である。
インボイス廃止のためには、「フリーランスや一人親方にとって死活問題」と訴えるだけでは、多くの国民にとって他人事であり、悪質な「ネコババ論」を信じる人もいる。
インボイス廃止のためには、迂遠なようでも「消費税の仕組み」を広く国民に知ってもらうことが必要である。
<参考記事>
なお、値引き要求や取引排除については、財務省、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、国土交通省から、インボイス制度についてのQ&Aが発表されている。
「インボイス制度への免税事業者への対応 公正取引員会Q&Aを参考に」に書いたように、実効性に疑問があるし、現に値引き要求や取引排除は起きている。