フリーランスのWEBデザイナーの自宅兼事務所にて
フリーランスのデザイナー事業主A
妻Bと二人で事業を営む個人事業者
青色申告で年商800万円
消費税は免税事業者
下記の通知書が取引先から届く
お取引先事業者様・協力会社各位
XYZ株式会社 経理部
2021年(平成33年)8月31日
1)ご承知のように消費税インボイス方式導入にともない本年10月1日より「適格請求書発行事業者」の登録が始まります。2023年3月1日までに税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し適格請求書発行事業者番号の登録を受けてください。
2)2023年10月1日以後の当社あて請求書は適格請求書発行事業者番号を記載した「適格請求書」でお願いいたします。
3)なお適格請求書発行事業者の登録が完了するとインターネットで公開されることになっており、2023年9月30日までに登録が確認できない場合は、当社とのお取引はできないことになりますのでご承知おきください。
二人の会話
B「これってどういうこと? もう同じ内容の通知が他からもきてるけど、要するに税務署にいって登録してくればいいんでしょう」
A「まあそういうことなんだけど、高校の同級生に税理士がいるんで聞いてみたら、これ登録するとこれから消費税を納めなくちゃならないらしいよ。これまでも請求書に消費税つけてもらってたんだからしょうがないかな」
B「10%っていうと80万も納めるわけ」
A「それも聞いてみたけど、どうもそれほどにはならないっていうけど、話が難しくて正直よくわからなかった。これから勉強だね」
B「でも何十万も払うんでしょう。単価上げてもらわないと事務所の維持費が出ないわよ。お願いできないかしら」
A「値上げしてよそに仕事とられちゃ元も子もないしね」
解説
2021年(平成33年)10月1日 適格請求書発行事業者登録が開始されます。
消費税の免税事業者は「適格請求書」を発行できません。適格請求書を発行したければ課税業者を選択する必要があります。
インボイス方式の問題点として「免税業者が取引から排除される」という影響が心配されています。
どういうことかというと、消費税免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行できません。一般の消費者を相手にしている限り何の問題もありませんが、相手が消費税の納税義務者の場合、取引から排除される(つまりものを買ってもらえない、相手にされない)可能性が高くなります。
買った側、サービスの提供を受けた側に立って考えると分かることですが、お金を支払い、領収書をもらっても、それが「適格請求書」でなければ、消費税の計算上は「なかったもの」とされてしまうからです。
支払い側からみると「仕入」や「外注費」に該当し金額も多額な場合は、免税業者を排除する(取引をしない)という動きは確実におきてくると思われます。もっともこれらの場合は課税事業者であることの方が多いので、2023年3月1日までに税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し適格請求書発行事業者番号の登録を受けてください。
適格請求書発行事業者は、売上の多寡に関係なく免税業者になれません。現在免税業者であるフリーランスの専門職、建設業の一人親方、主に事業所を顧客とする飲食店・弁当屋などは、大きな岐路に立たされることになります。貸事務所や駐車場などの賃貸業も同様です。
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この記事は2019年1月現在の情報によって記載しています。
2022年1月19日公正取引員会HPに、中小企業庁等5省庁連名で、下記文書が公表されました。
「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」
この文書では、「課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。」とあることから、「取引を打ち切る」といった、この近未来物語のような文書が、届くことは、ないものと思われますが、課税事業者になるような慫慂は、当然予測できます。