消費税ネコババ論について

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消費税をもらいながら、払っていない人がいる。これが「消費税ネコババ論」です。
自分が払った消費税が、税務署に納付されず、業者のふところに入ってしまう、ケシカランというわけです。これもインボイス制度を後押しする応援団になっています。
消費税法には「事業者免税」という制度があって、前々年の売上が1千万に満たないと、消費税の納税義務がありません。事業者免税制度の是非については、おくとして、「消費税ネコババ論」には、消費税についての誤解があります。

消費税は「預り金」でないこと

ネコババ論者は、消費税の納税義務者は、消費者と考えているようですが、消費税の納税義務者は、事業者です(消費税法第5条)。

消費税を税務署に申告納付する事業者は、レシートの消費税をそのまま納付しているわけではありません。仕入金額を元に計算した仕入税額控除という金額を差し引きして納付しています(消費税法30条)。

上記からレシートの「消費税」の金額は、いかなる意味でも消費者からの「預り金」ではありません。

消費税は価格の一部

外税のレシートをみると、レシートの「税」は、消費税と勘違いしそうですが、この「税」は、販売価格の一部です。
消費税法は、対価の額(実際の販売価格)から、消費税相当額を差し引きした金額を「課税標準」とし、この金額に税率を乗じた金額を消費税額としています(消費税法28条)。

800円のラーメンならば、800円の110分の100、727円が課税標準で、これの10%72円を消費税として計算し税務署に納めます。これだと合計799円ですが、消費税とは、こういったものです。

実際の負担者は、わからない消費税

消費税の税額は、実際の販売価格(いわゆる税込み)を元に計算されます。販売価格は、競争や、事業者の戦略で決定されます。下請けやフリーランスでは、発注者が決める例も多いでしょう。

消費税は、今や最大の税目となっています。しかし、実際に誰が、どれだけ負担しているか(租税帰着といいます)、計測が難しい税金です。

その大部分は、消費者に帰着していると思いますが、競争上、また、顧客減少をおそれ、消費税を転嫁できない事例もあります。この場合は消費税の負担は売り手である事業者となります。大手量販店ですら、戦略上利益を度外視して、安売りすることがあります。この場合は、量販店が消費税を負担していることになります。

消費税法は、販売価格を元に消費税を計算しますから、転嫁できていない売上でも消費税を含むものとされます。

消費税の転嫁(帰着)については、実証研究がまたれるところですが、ほとんど見かけません。「消費税の転嫁と帰着」白石浩介著が、貴重な研究です。

免税制度について一言

消費者に関係なさそうな、免税制度ですが、仮に免税制度がなくなると、免税業者も、自分が納める消費税分だけは、値上げせざるをえないでしょう。消費者にも関係ある制度だということは、知って欲しいのです。