誤解だらけの消費税 インボイスをめぐって

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消費税のインボイス制度の開始が目前です。この制度の問題点を指摘する新聞や雑誌記事を目にするようになりました。特に、社会的影響力のある方にお願いしたいことがあります。それは「消費税法を読んでください」ということです。

ほとんどの方が基本的な点を誤解していると思われるからです。
消費税法は、ボリュームがあり、難解ですが、消費税法次の条文だけは確認してほしいのです。

納税義務者(消費税法第5条)

消費税の納税義務者は、消費者でなく、事業者であるということ。

インボイス制度によって、「零細業者が大変」という記事があっても、「消費者の払った税金が正確に国庫に入る」のでインボイス制度自体は、合理的という主旨の記事をみかけます。消費税は消費者からの「預り金」だと思っているようです。

納税義務者が消費者ならば「預り金」ですが、消費税の納税義務者は、消費者ではなく、事業者です。したがって「預り金」ではありません。

課税標準(消費税法28条)

課税標準とは、税率をかける前の金額、税抜き金額のことです。外税のレシートを見慣れているので、税抜き価格×(カケル)税率で、消費税が計算されると思っている人がほとんどです。

消費税法の規定では、販売価格(税込み金額)から、消費税率で割り戻したものが税抜き価格です。販売価格は、他社との競争や、買い手との力関係、自社の戦略などで決まります。場合によっては、発注先から、金額を指定される例も多いと思います。

ラーメンを800円とするか680円とするかは、店主の自由です。
800円ならば、その110分の10=72円が消費税と計算され、680円ならば、同じく110分の10=61円が、消費税とされます。
(税率10%)

店主の希望する価格が、税込み800円ならば、店主にとって、消費税はお客からいただいた「預り金」という感覚も納得できるでしょう。しかし、800円としたいところだが、やむを得ず、680円としている店主からすれば、消費税は、「預り金」どころが、自分が負担する「売上税」と感じるでしょう。レシートが「680円(うち税61円)」となっていても、です。

消費税は、販売価格の一部であり、販売価格から消費税額が計算される仕組みです。消費税法では、いくらで売ろうが消費税を含まない売上はないのです。

消費税が、誰の負担になるか(租税帰着という)は、その時々の状況によるので、わかりませんが、「弱者」に帰着する傾向があります。

日常の買い物では、消費者に価格決定権がなく、提示価格で買うしかありません。価格決定権がない消費者は、弱者です。

しかし、下請け企業やフリーランスには、価格決定権がないことが、ほとんどです。

仕入税額控除(消費税法30条)

多くの人は、レシートの消費税は「預り金」で、そのまま税務署に納付されていると思っていますが、これは誤解です。

消費税の納税者(実際に税務署に納付する人:事業者)は、このレシートの消費税から、仕入税額控除という金額を差し引いて納税しています。
納付税額=消費税―仕入税額控除

インボイスが問題とは、この仕入税額控除の方法が変わることです。
現在(旧法)では、仕入税額控除は、消費税法が「仕入」と規定するものすべてを対象として仕入税額控除の金額を計算していました。

インボイス制度導入後は、仕入税額控除の対象となる「仕入」は、インボイス(適格請求書)が、あるものに限られます。
インボイスを発行するためには、税務署に申請して「番号」をもらう必要があります。

インボイス問題とは

インボイス(適格請求書)がない仕入は仕入税額控除が受けられなくなる。

インボイスの発行のためには、税務署に申請し、番号をもらわなくてはならない。

インボイスの発行事業者となると、免税事業者の特例を放棄する必要がある。

消費税の問題、インボイス問題について、記事にし、論評する場合は、最低限、消費税法の三つの条文を読んだ上でお願いします。