「デジタル政府指数、日本33カ国中31位」という報道を読んで

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OECDが発表した「デジタル政府指数」の順位である。この調査は、「政府のデジタル優先度」「データ利用の優先度」「デジタル基盤」「開かれた政府」「国民需要への対応」「デジタル化への積極性」の6分野で評価したが、日本は全分野で低評価だったという。

デジタル政府指数、日本は31位 コロナ禍対応に遅れ急落:東京新聞 TOKYO Web
世界の先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)がこのほど発表した2023年版「デジタル政府指数」で、日本は調査対象の加盟33カ国中...

当然の結果

これは、当然の結果としか思えない。

今、政府が重要視し、メルクマールとされているのは、マイナンバーカードの普及と、e-TAXに代表される電子申請の数としか思えない。

マイナンバーカードで「コンビニで住民票・印鑑証明がとれる」ことが、それほど便利とは思えない。e-TAXにしても行政サイドの効率化だけが優先されているように思える。

なぜデジタル化なのか

日本の立ち後れは明らかだが、そもそも、「なぜデジタル」化かといえば、デジタル技術の活用により、行政の可視化、住民が便利となる、行政の効率化などに資するからということであろう。

今から20数年ほど前、日本の立ち後れが問題視されたことがあった。遅れを取り返すべく、官民挙げて取り組まれたのが「ミレニアムプロジェクト」であり「e-japan」戦略である。

どこかで方向が変わってしまったようだ。

マイナンバーカードの普及は目的ではないはず

デジタル政府とは、マイナンバーカードを国民に持たせることではない。デジタル政府の目指すところは、OECDの6分野の評価指標をみても、明らかなように、開かれた政府=行政の透明化であり、国民需要への対応=国民が便利さを享受することである。

行政効率化によって、行政コストが削減され、その分が国民に還元されるという意味で、かつて語られた「電子政府の配当」など死語である。何を目指しているのかよくわからない。

整わない「デジタル基盤」

OECDの評価指標「デジタル基盤」が、何を指しているか不明だが、デジタル政府に不可欠な基盤整備が遅れている、整っていないことは明らかだと思われる。行政の「デジタル化」には、認証基盤が不可欠である。ところが、政府の認証基盤である「GPKI」(政府認証基盤)の認知度は極めて低い。

不可解な公的個人認証(JPKI)制度

公的個人認証サービスとは、地方公共団体が運営する認証局であり、鳴り物入りのマイナンバーカード格納されている証明書は、ここが発行している。

ところが、これが使えないシロモノである。

クライアントソフトを入れても、肝心の電子署名ができない。電子申告では、電子署名は、国税庁側のシステムに依拠している。これは、あらゆる行政手続に共通するようである。しかも署名検証者も行政サシドのみを想定した仕様になっている。

これでは、民間で全く使えないのである。

マイナンバーカードには「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」が二つ格納されているが、「署名用電子証明書」は、付け足しであり、マイナンバーカードによって、公的個人認証制度は、当初の計画より後退したとしか思えない。

実印と、印鑑証明の時代は続く。