参議院選挙では、消費税減税が最大の争点となりそうである。各党の主張は様々であるが、一様にその目的として「物価高対策」をあげる。しかし、これが物価高対策にどの程度効果があるのか、疑問である。
消費者の誤解と各党の思惑
各党が、減税を主張するのは、消費税減税によって、物価が下がると「国民多数がそう信じている」からである。
多くの人は10%の消費税が、5%になれば、現在1100円のものが、1050円になると信じている。レシートを見慣れているので、こう考えるのは、もっともなことだが、これは全くの誤解である。
消費税の仕組みから
ほとんどの人は、消費税の納税義務者は消費者で、消費者が負担する税金だと信じている。ところが、消費税の納税義務者は「事業者」であり、消費者が負担することを予定した税金である。
この「予定」がクセもので、消費税にみあう値段で売れれば、消費者が「負担したことになるし、そうでなければ、事業者が負担したことになる、境目が明確でないヌエのような税金である。(専門用語では、これを「税の帰結」という)
値段がいくらであっても、消費税をもっらたことになる。消費税がない「売上」はない。その税金を税務署に納めるのは、事業者であり消費者ではない。
税率アップと税率下げの物価への影響
消費税率が上がれば、物価押し上げに、下がれば、押し下げに影響がある。ではどの程度の影響があるかというと、それはわからない。軽減税率が実施されても、その政策効果の検証がされたのだろうか。むしろ検証して効果がないことが、知られたくないのかと勘ぐりたくなる。
消費税率アップと物価と関係につては、「消費税の転嫁と帰着」という優れた実証研究がある。
税率アップの影響
税率アップには、明らかに物価を押し上げる効果がある。納税義務者である「事業者」は、アップ分の消費税を価格に転嫁しなければ、自分の負担となる。その強制力は絶対的である。
税率下げの影響
アップと違うのは、価格下げの圧力は消費者サイドやからくる。「消費税が下がったのに安くならないのか」という声である。この圧力は、どの程度ものか、よくわからないが、アップ時の「強制力」ほどではない。この圧力は「買い控え」という形であらわれるかもしれない。
この圧力に対しては、「本体1000円+税100円」を「本体1048円+税52円」とすることで、乗り切れるかもしれない。これを「ズルイ」と言ってはいけない。利益を追求するのが商売である。また従来の1100円でも消費税10%に見合う価格ではなかった(消費税の転嫁ができていなかった)のかもしれない。これでようやく生き延びることができるという業者もいる。
これが消費税ヌエのようなものという意味である。
知ってか知らずか
消費税は、今や最大の税目となっている。消費税が国民のポケットから納税されていることは間違いのない事実である。
しかし、消費税減税の物価への影響は、疑問である。これを参議院選の争点としたい各党の思惑は、票を目当てで、国民多数の消費税への誤解につけ込むものである。消費税の現実を「知ってか知らずか」である。正しい理解の上で、政策を主張してもらいたいが、まずは、国民の側が、消費税を理解することだ。