選挙のたびに争点となる消費税。しかし、身近なようで、意外と知られていないのが、消費税。議論の前に、まず正確に知って欲しいというのが、私の願いです。
消費税には「事業者免税」という規定があります。
消費税法9条
「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間おける課税売上高が千万円以下である者については、・・・消費税を納める義務を免除する。」
「免税業者に消費税を払っても、納付されない」ということで、問題視されるのが、この事業者免税制度です。上記の「基準期間における課税売上」とは、前々年の売上をいいます。前々年の売上が千万以下の者は消費税を納める必要がないとする規定です。なお消費税創設時から平成16年までは、3千万以下まで免税事業者とされていました。
免税業者はどのくらいいるか
令和2年度の国税庁統計から、免税業者数を推定すると、法人(会社)では、法人数は、281万であり、消費税の申告数(還付申告を含む)が、203万件で、法人のうち、消費税の申告をしていない法人は、78万社ほどあることになり、これが法人の免税業者数の近似値と推定できます。
難しいのは個人事業者で、個人事業者で消費税の申告をしている者は還付申告を含め113万人です。これに対し所得税の事業所得の申告者は、395万人、不動産所得者154万人、雑所得者565万人です。複数の所得がある人もいるので、「主たるもの」の欄の人数です。これでは、免税事業者数の推定は困難ですが、おそらく数百万人ということになりそうです。
事業者免税制度の趣旨
大蔵省(当時)による、免税制度創設趣旨はおよそ次のようなものでした。
・消費税の課税趣旨経済に対する中立性という観点から、免税業者は極力もうけないほうが望ましい。
・すべての事業者が納税義務者となる制度の導入ははじめてであり、小規模零細事業者の納税事務負担や税務執行面に配慮する必要がある。
・上記観点から一定規模以下の小規模事業者については、納税義務を免除することとする。
まとめると、免税制度はないのが望ましいが、小規模事業者の事務負担、税務執行面から、この制度が創設されたということになります。その後は「小規模事業者」の範囲が広すぎるということが、度々論議され、平成16年4月から、3千万から1千万に引き下げられました。
インボイス制度の導入による免税事業者への影響
さらに「消費税に対する国民の信頼性」「制度の透明性」という観点からインボイス制度が導入されることになりました。
インボイス制度によって、1千万以下免税の規定があったとしても、「課税事業者」を選択せざるえない事業者も多数あるものと思われます。その意味では、事業者免税制度の大改正ともいえます。