インボイス施行から2年 ”インボイス廃止!”

「家父長制と資本制」上野千鶴子

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家父長制と資本制/上野 千鶴子|岩波現代文庫 - 岩波書店
階級闘争でも性解放運動でも突破しえなかった,近代資本制社会に特有の抑圧構造を明快に分析する代表作. 上野 千鶴子 著

昨年の「103万の壁」騒動は、「家父長制」がいまだ「健在」であることを如実にしめした。
「家父長制」というと、「封建的なもの」「前近代で過去のもの」というイメージがあるが、この本では「再広義の家父長制のもとでは、男性は女性に対して、一種の利益集団を構成する。」「家父長制の側からみれば、資本制もまた家父長制に従属する、一つの制度的変種にすぎない。男性労働者もこれから利益を得る。」とある。

「103万の壁 上野千鶴子」で検索すると、PRESIDENT Onlineの『103万円の壁で得してきたのは主婦ではなくオジサン」壁を上げてまで温存しようとする本当の理由』という記事がヒットする。
『玉木代表は元財務省官僚なのに、「女性が夫の扶養の範囲で働く」というこの時代遅れの制度を、なぜ限度額を引き上げてまで延命させようとしているのか、私には理解できません。』とあった。

これで、「家父長制」の意味が、なんとなく分かっていただけるものと思う。この本は、103万の壁問題の本質をみごとにえぐり出している。

パートタイム就労の発明


パートタイム就労は、資本制の発明であり、女性に主婦役割と抵触しない新しい労働の形態を提供した。この発明は企業の都合で成立した。こうして、パートタイム就労の主婦労働者は、日本の労働市場の不可欠な一部分として労働市場に組み込まれた。

彼女たちは、中途採用の・家庭責任のある・非熟練の労働者として、ハンディだらけで労働市場に参入し、低賃金・単純労働型・不安定雇用の労働者となった。(本書第10章より)

M字型就労

日本では「家父長制」を温存した既婚女子労働市場の成立に成功した。それを示すのがM字型就労である。M字型就労とは、女性の就労形態が、結婚を機に退職し、子育てが終わって、パートとして、就労する形態をいう。

民間給与実態統計

この本の初出は1990年であるが、国税庁の最近の「民家給与実態統計調査」をみても変わっていない。

税務統計にみるジェンダー・ギャップ(その1)賃金格差
税務統計にみるジェンダー・ギャップ(その2)配偶者控除
税務統計にみるジェンダー・ギャップ(その3)配偶者特別控除
税務統計にみるジェンダー・ギャップ(4)「103万の壁」とパート主婦

世論調査にみる「家父長制」健在

共同通信2024年11月世論調査には、次の項目があった。

「国民民主党は、手取りの増加に向け、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」を178万円に引き上げるよう求めています。一方で、引き上げによって国と地方の税収が年間で約7兆6千億円減少する見通しです。あなたは、年収の壁の見直しに賛成ですか、反対ですか。」

このような世論調査があること自体「家父長制」の健在を如実にあらわしている。