報道によれば、政府は高校生の扶養控除を縮小することを検討しているとのことです。(東京新聞WEB)
所得税の仕組みでは、一年分の所得から、「所得控除」というグループを差し引きした後の金額(課税所得といいます)に、税率をかけて、年間の所得税を計算します。扶養控除は、この所得控除の一種です。
なぜ縮小か、といえば、高校生も児童手当の支給対象(月額1万円)となるためだといいます。
扶養控除縮小の影響
児童手当が12万円支給されるのですから、現行38万円の扶養控除を廃止したとしても、負担が増えるのは、33%の税率が適用される課税所得900万円以上の人だけです。これは年収に換算すると1500万以上になるでしょう。
これ以下の所得の人(つまり大多数)の人は、給付があるので、増税があっても、差し引きでは、収入が増えます。
扶養控除縮小の幅が未定ですから、給付と増税の差がどうなるか不明ですが、比較的高額な所得の人は、給付と増税がほとんど変わらないということもあるでしょう。
児童手当拡充の効果を減殺
児童手当として給付しながら、増税で負担を求めるという制度は、児童手当拡充の効果を減殺します。
児童手当拡充と「扶養控除縮小」をセット行う必要性があるのか疑問です。
扶養控除を変える必要はあるのか
おそらく扶養控除縮小は、「手当を支給するのに、税金でも控除を認めるのか」という批判に考慮した結果なのだと思います。
高額所得者に給付する必要がない、あるいは、1万円給付が多すぎるというのが本音ならば、給付で調整すべきであり、税制まで、踏み込む必要はないのではないでしょうか。
扶養控除縮小で年末調整も複雑に
令和5年分の扶養控除等申告書の「扶養親族」欄をみると、B扶養親族(16歳以上)とあり、同居老親等、その他、特定扶養親族のいずれかにチェックするようになっています。16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)は、ここに記載せず、「住民税に関する事項」欄に記載します。
今回改正されると、これに、高校生(16歳から19歳)の区分が追加されることになり、源泉徴収票も変わります。
扶養控除という税金の仕組みを変更すると、今でも難しい年末調整が、更に複雑になります。
これだけの変更でも、税額計算が変わる、書式が変わるなど年末調整を行う現場は、大変です。この負担は、一切考慮されることはありません。