選挙のたびに争点となる消費税。しかし、身近なようで、意外と知られていないのが、消費税。議論の前に、まず正確に知って欲しいというのが、私の願いです。
消費税というと、誰もがレシートに記載された「税」を思い浮かべます。ところが、これ以外にも「税関」(税務署でなく)に納付される消費税があることは、意外と知られていません。
直近の税務統計(令和2年度)では、税関分の消費税申告件数は、1578万件で、税額は、5兆4664億円です。税務署分の税額が、19兆1719億円で、ここから還付分を差し引くと、14兆2621億円です。消費税総額のうち、およそ28%が、税関扱いということになります。けっこう多いなと感じませんか。食料品や身近なものの多くが輸入品なんですね。
輸入貨物を引き取る者は納税義務がある
消費税法では課税資産の譲渡等を行う事業者以外にも、モノを輸入する人にも納税義務があると規定しています。
消費税法5条2項「外国貨物を保税地域から引き取る者は、この法律により消費税を納める義務がある。」
保税地域とは、輸入許可が下りる前の輸入貨物の置き場のことで、コンテナヤードなどとも呼ぶようです。要するにモノを輸入する人は、消費税の納税義務があり、税関に申告し、消費税を納付しなければ、モノを引き取ることができません。
ここで注意すべきは、5条1項の納税義務者(資産の譲渡等を行う事業者)と違い「事業者」に限定されません。また消費税の算出根拠となる金額(課税標準額)は、関税定率法の課税価格に準じて算出されます。したがって、タダのものであっても、自社の海外支店から持ち込んだものであっても課税されます。
税関で払った消費税は、消費税申告時に控除される
普通の輸入業者であれば、売るために輸入するのですから、税務署に消費税を申告するときに、「仕入税額控除」として、控除されます。したがって、税関支払い分は、仮払いのような性格であるともいえます。
それでも税の性格が違う
国内で事業者が、モノやサービスを販売したときにかかる消費税(普通の消費税)と、輸入申告でかかる消費税は、どちらも「消費税法」に規定されている「消費税」ですが、税金としての性格は全く違います。後者は輸入関税と同様な性格をもっています。しかし、同一の消費税とされることから、輸入業者の消費税申告時に「仕入税額」として控除されます。仮に別個の税として扱われると、輸入業者は、コストとして、販売価格に転嫁することになります。うまい仕組みを考えたものと思います。しかし、税としての性格は全く違います。