12月26日「令和8年税制改正大綱」が、閣議決定された。お金(税金)の集め方と使い方(予算)は、政治の基本であり、税制改正大綱は、ときの政権の国民(納税者)に対する訴えである。
政治家不在の「大綱」
税制改正大綱をみると、ときの政権の性格が分かる。
特に大綱の冒頭部分は重要である。なぜ改正が必要か、という説明があって、しかるべき部分であるが、令和8年大綱では、何もないといってよい。
最近の税制改正大綱は、租税特別措置の羅列である。この国に政治家はいなくなったようだ。
今回の大綱冒頭部分は、政治決着で譲歩した、基礎控除等の引き上げ等に触れるのみであり、文末に、なんの脈絡もなく「防衛特別所得税(仮称)の創設等を行う。」とある。やはり、大綱には、高市政権の性格が見事に現れているといわざるを得ない。
暗号資産分離課税にみる税制の作られ方
令和8年で注目すべき改正があった。暗号資産譲渡所得の分離課税への変更である。
毎年繰り返される「税制改正」であるが、次の経過をだどることが多い。暗号資産関連の改正も典型である。
①業界団体からの要望→②それを受けての各府省の財務省への要望提出→③与党税制調査会→④税制改正大綱閣議決定→⑤通常国会への「所得税法等改正案」上程→⑥衆参両院可決
①はブロックチェーン協会であり、②金融庁である。
ブロックチェーン協会からの政治献金は確認できないが、税制改正要望と、政治献金は表裏の関係である。
分離課税で得する人損する人
暗号資産による儲けは、今回の改正が実現すると、総合課税から20%(15%+住民税5%)の分離課税となる。総合課税は、累進税率が適用される。現在の税率表では、課税所得330万を超えると20%の税率が適用されるので、年収600万円程度を境として、これ以下で、サラーマンの小遣い稼ぎ程度であれば、増税となり、所得の多い人ほど減税になる。令和5年申告所得税標本調査(国税庁)によると、5千万円を超える所得者で「その他雑所得」がある人は、2万3千人である。このすべてが、暗号資産譲渡所得ではないが、この人たちは、45%の所得税が20%になるという大幅減税である。
本来は、税制改正大綱はもっと注目されてよい。ときの政権の性格がよくわかるので、冒頭部分と最終ページの「増減収見込額」だけは、先に読むこととしている。
