こりゃ何だ!基礎控除が「措置法」に

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迷走した税制改正だが、改正法をみて驚いた。所得税の基礎控除といえば所得税法の根幹である。この基礎控除が「租税特別措置法」とは、驚きである。

提出時法案

当初法案は、所得税法の改正である。
「第八十六条第一項第一号中「二千四百万円」を「二千三百五十万円」に、「四十八万円」を「五十八万円」に改め」とある。

基礎控除の額を10万円引き上げ48万円から58万円とした。

修正案(自民・公明案)可決

修正案は、基礎控除の特例として租税特別措置法に所得区分に応じて4段階で増額するものである。上乗せ額は最大37万円である。
これによって、課税最低限は給与収入では160万円となった。

給与所得控除65万+基礎控除(所得税法)58万+措置法による基礎控除上乗せ37万円である。

詳細は財務省HPにある。

基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設 : 財務省
基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設

上乗せ特例の趣旨は

財務省HPの説明によれば、下記のとおりである。
(1)低所得者層の税負担への配慮―恒久的措置
(2)中所得者層を含めた税負担軽減(高所得者層優遇とならないよう工夫して上乗せ―令和7年8年)

これには若干の説明が必要である。(1)の恒久的措置は所得税法の改正である。上乗せ特例は租税特別措置法である。
上乗せ特例は、令和7年8年においては、合計所得金額655万円までは適用されるが令和9年以後は、132万円までに限定される。

追加された租税特別措置法の条文は下記のとおり。

「令和七年分以後の各年分において、居住者のその年分の所得税に係る合計所得金額―略―が六百五十五万円(令和九年分以後の各年分にあつては、百三十二万円)以下である場合における-略―基礎控除の額は、同条第一項の規定にかかわらず、同項第一号に定める金額に次の各号に掲げる年分の区分に応じ当該各号に定める金額を加算した額とする。」

「基礎控除上乗せ特例」という異常

提出時法案に盛り込まれた事項は「恒久的措置」として本法に規定され、上乗せは「租税特別措置法」となった。

こうなった原因は「課税最低限引き上げ」めぐる政治決着である。
ここで問題にしたいのは、課税最低限を160万円にすることの是非ではない。所得税法の「基礎控除」は、所得税の概念の根幹をなすものであり、措置法で規定するような性格のものではない。おそらく租税法学者もそう考えるに違いない。理念なき「改正」というべきであろう。まるでパッチワークである。