正社員と非正規の賃金格差は、かねてより問題視されてきた。
令和5年「民間給与実態統計調査」結果が公表された。第6表は、「役員」「正社員(正職員)」「正社員(正職員)以外」と区分して、給与所得者数、給与総額、平均給与などが集計されている。
今、正社員と非正規の実態はどうなっているのだろうか。
非正規労働者の人数と割合
統計調査は、給与所得者の人数を給与金額階級別に表にしている。200万円以下から1000万円以下の階級の正規、非正規別人数は下記のとおり。一年を通して勤務した人で、乙欄適用者は除外した人数である。100万円以下は、短時間労働と思われるので、除外した。
※乙欄とは源泉徴収税額表の「乙欄」で、二か所以上から給料をもらう人の、2か所目以後の給料に適用される。通常の税額表は「甲欄」である。
表1(人数)
給与階級 | 正社員 | 非正規 |
---|---|---|
200 万円以下 | 1,116,852 | 4,107,207 |
300 〃 | 3,434,679 | 2,937,182 |
400 〃 | 6,511,633 | 1,122,232 |
500 〃 | 6,882,846 | 421,223 |
600 〃 | 4,836,209 | 189,913 |
700 〃 | 3,215,177 | 110,251 |
800 〃 | 2,161,640 | 77,101 |
900 〃 | 1,383,130 | 42,586 |
1,000 〃 | 981,542 | 20,483 |
合計 | 30,523,708 | 9,028,178 |
グラフ1(割合)
上記をみると、非正規労働者は、200万円以下の階級で78%、300万円以下で46%、400万円以下で、14%である。
非正規労働者の割合(男女別)
表2(男女別割合)
給与階級 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
200 万円以下 | 72.5% | 80.5% |
300 〃 | 42.3% | 48.4% |
400 〃 | 14.5% | 14.9% |
500 〃 | 6.0% | 5.4% |
600 〃 | 3.9% | 3.4% |
700 〃 | 3.5% | 2.6% |
800 〃 | 3.5% | 3.2% |
900 〃 | 3.1% | 2.2% |
1,000 〃 | 2.1% | 1.4% |
200万円以下で女性の割合が高いが、人数でみた場合は、割合は男女間の差はないようだ。
比較的高額の階層の「非正規」は、資格、専門技能などが理由とも考えられ、賃金格差が問題となるのは、400万円以下の給与までである。ここに絞って、賃金格差を比較してみたい。
賃金比較
実態統計の給与総額を人数で割って、平均給与を算出した。
表3(平均賃金)
給与階級 | 正社員平均 | 非正規平均 |
---|---|---|
給与階級 | 正社員平均 | 非正規平均 |
200 万円以下 | 1,535,022 | 1,404,661 |
300 〃 | 2,582,205 | 2,446,561 |
400 〃 | 3,529,756 | 3,414,210 |
グラフ2(平均賃金比較)
いずれの給与階級も非正規のほうが、低い。気になるのは、男女の違いである。これはどうなっているのだろうか。
正社員、非正規、男女の違い
正社員、非正規、男女別の平均賃金を算出してみた。
表5(正社員、非正規男女別平均賃金)
給与階級 | 正社員男性 | 正社員女性 | 非正規男性 | 非正規女性 |
---|---|---|---|---|
200 万円以下 | 1,595,722 | 1,508,325 | 1,482,989 | 1,382,741 |
300〃 | 2,600,503 | 2,569,951 | 2,476,553 | 2,430,845 |
400 〃 | 3,556,367 | 3,501,135 | 3,447,152 | 3,379,673 |
グラフ3(正社員、非正規男女別平均賃金)
上記は、男性正社員の給与に対する割合である。いずれの給与階級でも、非正規は正社員より低く、非正規の中でも、女性は男性より低い。
300万円以下(200万円台)、400万円以下(300万円台)となると、フルタイム労働者だと推測できるので、就労時間の差ではない。仕事の内容は不明なので、これだけで「格差」とは断定できないが、このような実態である。
ひとこと
結論をみると「やはり」と思える結果になった。
厚生労働省のサイトに、「正社員と非正規労働者の現状」というレポートがある。これのよると、企業が非正規社員を活用する理由のトップが「賃金の節約のため」(61%)である。
非正規雇用が増加した(というより始まった)のは、1980年代半ばからであり、若年層から始まっている。1990年の若者は現在は、まもなく還暦世代となる。その後就職職氷河期世代が続く。無年金や、極端に少額な年金の層が増加することは、容易に想定できる。
80年代から始まった「改革」(新自由主義)のツケがまわってくるのは、これからである。