消費者で消費税を誤解している人は多いと思って消費税の誤解で検索したら、とんでもない記事に出くわした。事業者向けに書かれた記事で、「消費税はお客さんからの預り金だから、あなたにとって損はない」という主旨のことが書いてあった。
消費税は預り金ではない
消費税を語るのに「消費税法」を読んでいない人が多い。消費税法は、事業者を納税義務者としており、消費者は納税義務者ではない。この一点だけでも「預り金」でないことは明らかだ。しかし、残念ながら、こう思い込んでいる人は多い。
原因は「消費税」という名称にあるのかもしれない。確かに消費税は、価格転嫁を通して、消費者に負担を求める仕組みになっている。
「消費者に負担を求める仕組み」といっても
消費税は、事業者に対して「売上に応じて消費税を納めてください」ということを納税義務者である事業者に強制し、事業者は消費税分を価格に上乗せせざるを得ない状況にする仕組みである。 価格に上乗せすることができれば、消費者に税負担を転嫁できるが、そうなるとは限らない。価格に上乗せできなければ、事業者の負担となる。消費税は、誰の負担になるか分からないヌエのような税金である。

商売する人は売上に応じて消費税を払ってください

そんなこと言われてもこまるよ

だからラーメン800円を880円にして、
お客さんから消費税分もらえばいいんですよ

そんなことしたらお客さんがへっちゃうよ
消費税もらわないで800円のままだどうなるの

800円でも消費税はもらったことになるんですよ
えーっと、800円×10÷110で、72円が消費税です
解説
「消費税法」だから消費に課税し納税義務者は「消費者」と思うのも無理はないが、消費税法には、消費税の納税義務者は事業者と書いてある。
第五条 事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三十条第二項及び第三十二条を除き、以下同じ。)及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。以下同じ。)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。
消費税法には、実際にお客さんからもらった金額から消費税を計算すると書いてある。いくらで売ろうと消費税はもらったことになる。
第二十八条 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び第三項において同じ。)とする。
非常に難解な条文である。「課税標準」とは税率を掛ける金額であり、課税標準×税率が消費税額となる。では「課税標準」は、どうやって計算するかというと、「対価として収受する金額」から「消費税相当額」を差し引きした金額だという。ここでいう「対価として収受する金額」とは、お客さんから受け取る金額のことで、「税込み金額」のことである。
本体価格に消費税を乗せて税込み価格が算出されるわけではない。ここに書いてあることは、普段みなれたレシートの逆である。