「103万の壁」(その2)なぜ「98万の壁」といわないのか

この記事は約2分で読めます。

連日のように「103万の壁」が、ニュースになっている。年収103万を超えると、所得税が発生するので、雇用調整をする人がいるという。テレビ、新聞は、これを「年収の壁」と解説している。

これはおかしな話である。103万は、所得税の基礎控除48万と給与所得控除55万の合計であるが、住民税の基礎控除は、43万であり、税金が発生するラインを「壁」と表現するならば「壁」は98万である。しかも、所得税の税率は5%だが、住民税は10%である。「壁」を超えると、1万円につき、所得税は500円、住民税は1,000円発生する。税金が発生することを「壁」というならば、「98万円の壁」というべきである。

本来の「103万の壁」とは

年収が103万を超えて、わずかに税金が発生しても、これを「壁」と呼ぶのはふさわしくない。

従来いわれてきた「103万の壁」は、「年収の壁」ではなく「扶養限度」のことであった。「壁」を千円でも超えると「配偶者」が、配偶者控除の適用を受けられず、「親」が扶養控除の適用が受けられないということから、世帯収入が減り「働き損」になるという理由で「働きたくても働けない」という就労調整が行われることを意味した。

幻の壁

しかし、税制上は、配偶者については、103万を超えても、配偶者控除代わって「配偶者特別控除」の適用があるので、103万を超えても、世帯年収が減るという「働き損」状態はない。多くの人にとって「103万の壁」は幻の壁である。

ところが「103万を超えると損」という「常識」は、相当浸透しているようである。

見直し必至の状況の中で

税制の見直しは必至という政治状況である。こうなると怪しげな「専門家」も登場してくるので、注意が必要である。冒頭書いたように、いつのまにか「103万の壁」の意味が変わっている。また変わらないとも限らないので、「壁」の意味をしっかり確かめたほうがよい。