与党が引き上げ額123万を提示
税制改正をめぐる駆け引きが、進行中である。
12月13日の与党と国民民主の協議で、与党案は、基礎控除、給与所得控除をそれぞれ10万円引き上げて、基礎控除を58万円に、給与所得控除を65万円にするという内容であった。
なぜ基礎控除だけでなく給与所得控除と抱き合わせなのか
金額の問題は、さておくとして、基礎控除一本でなく、給与所得控除を含めて20万円引上げ案が提示されたことは、納得できない。
課税最低限の引上げならば、基礎控除の引上げが、一番「まっとうな」方法である。給与所得控除の引上げ分は、事業所得で申告している(せざるを得ない)フリーランス等の人には恩恵がない。
基礎控除について
税制における基礎控除は、税金が免除されるラインを定めたもので、相続税、贈与税などにも規定がある。
所得税の基礎控除は、憲法25条の生存権保障原則と深く関連する。最低限の生活を維持すための所得は担税力を持たない(課税してはならない)ということである。現行の48万円は、あまりにも低額である。
もっとも、発想を転換し、例外なく課税し、ベーシックインカムを導入するという選択もありうる。
給与所得控除について
所得税法では、給与所得の金額は、「給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額」としている。給与所得控除の金額は、収入に応じて算出される。最低額は55万円であり、最高額は195万円である。
給与所得控除の性格については、給与収入の概算経費として説明されることが多い。しかし、最低額の定めがあることから、給与収入が55万円以下ならば、給与所得は、ゼロとなる。これは、概算経費説では説明できない。
103万の壁論のなかでの給与所得控除の位置づけ
最近の103万の壁論では、これを所得税が発生する基準とする。103万とは、基礎控除48万と給与所得控除55万の合計である。ここでは、給与所得控除は、基礎控除の上乗せ分か、基礎控除と同等の扱いである。
こちらのほうが、概算控除説よりも実態にあっている。この給与所得控除の最低保証があるからこそ、基礎控除48万が許容されてきたとも考えることができる。
「給与所得控除」再考
かつて「給与所得」は、勤労性の所得であり、事業所得は、資産性と勤労性両方の性格を併せ持つといわれてきた。
しかし、億単位の役員報酬も、時給千円のパート給与も所得税法上は「給与所得」である。勤労所得そのものであるフリーランスは「事業所得」である。状況は変わったのである。
所得税の歴史をたどれば、「勤労所得控除」や「少額所得者の特別控除」などが、存在したこともある。いずれも税の負担能力に配慮した軽減措置である。
少額所得の事業所得者も対象となる新たな控除の創設、一定額以上の給与については、「経費」の実額控除による確定申告など、根本的に見直す時期にきている。