インボイス施行から2年 ”インボイス廃止!”

「年収の壁」=課税最低限は、間違っている

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「年収の壁178万へ」というタイトルの新聞・テレビなどをみると、「年収の壁」とは所得税の課税が始まる金額をいうらしい。しかし、これは誤りである。読売新聞参照。これはどこも同じである。

この178万の内訳は「基礎控除」62万、「基礎控除上乗せ分」47万、給与所得控除69万の合計である。

個人事業者・フリーランスの課税最低限は109万

事業所得で申告している個人事業者やフリーランスの人は、給与所得控除は、適用されないので、課税最低限は109万円である。国税庁統計によれば、令和6年の「事業所得」申告者は455万人であり、政府、国会議員、新聞、テレビは、この人たちのことは眼中にない。

給与所得控除につて

「年収の壁」をめぐる議論では「給与所得控除」の位置づけがまったく、わからない。

給与所得控除は「収入」から控除する金額であり、基礎控除は「所得」から控除する金額である。給与所得者にとって、どちらが増えても、課税所得はかわらないが、令和3年改正のように、基礎控除を10万円増やし、給与所得控除を10万円減額するような「朝三暮四」改正をやって、いいわけがない。

給与所得控除には、給与収入の概算経費説と説明されることがあるが、この説明で納得できるはずがない。概算経費なら最低保証はないはずで、税制の歴史から、みれば「勤労控除」が原点であったと解釈するのが、正解であろう。勤労控除は、社会政策的税制であり、勤労所得は、他の所得よりも「担税力」が低いとする判断(評価)が根底にある。

数億円の役員報酬も100万円に満たないパート収入も、所得税法では給与所得である。一方で、その実態は給与である、フリーランスや一人親方は、「事業所得」である。

現在の所得税の枠組みを前提にするならば、給与所得控除の原点である社会政策的意義に立ち返り、事業所得で申告している人にも適用される「勤労所得控除」とすべきであろう。

給与収入の必要経費は、あいまいな「給与所得控除」ではなく、実額控除とすればよい。

基礎控除について

基礎控除は配偶者控除、扶養控除など合わせて「人的控除」と呼ばれ、「所得のうち本人およびその家族の最低限の生活を維持するために必要な部分は担税力を持たないという理由によるものであって、憲法25条の生存権の保障の租税法における現れである」(金子宏 租税法)と、説明されている。

「年収の壁」問題では、もはや基礎控除の位置づけは、どうでもよいものになっている。

かくして、所得税の理念はどこかにいってしまい、税法は、複雑怪奇なものになっていく。