今日(2023年10月1日)から、消費税のインボイス制度が始まる。改めて、次の二点だけは指摘しておきたい。
消費税を転嫁できない人(企業)がいる
東京新聞の記事では「納税額を正確に計算できるよう導入」されたとあるが、これが政府の公式見解であろう。WEBでは、省略されているが、紙面では、免税から課税に変わった場合の納税額が、掲載されている。
売上高 | |||
業種 | 770万 | 550万 | 330万 |
小売業(食料品) | 11万4千円 | 8万1千円 | 4万9千円 |
飲食業 | 28万円 | 20万円 | 12万円 |
運輸・サービス業 | 35万円 | 25万円 | 15万円 |
インボイス制度で、「困る人」がいるということを知ってもらうという点では、この記事も意義があるが、最大の問題は、「インボイス制度によって、消費税を転嫁できない人も納税義務を負わざるを得ない」ということにある。
消費税法の仕組みでは、消費税を含まない売上はない。いわゆる「本体価格」と「税」の境界線は、対価の額(いわゆる税込金額)で移動する。売上には必ず消費税が含まれる。これは免税業者であっても同じである。
このことが、理解されていないので、消費税を転嫁できない人が大勢いることが、見過ごされている。自分で価格(単価)を決定できない人は、消費税の転嫁は困難であり、転嫁できなければ税負担は自腹となる。
軽減税率の効果は疑わしい
軽減税率は、税率アップに伴い、低所得者対策として導入された。食料品を8%に押さえることで、税率がアップしても、増税の影響を緩和することが、目的である。
新聞記事にあるように、インボイス制度は複数税率に対応するため必要になった、というのが公式な説明である。しかし、今まで消費税の申告書を作成してきた経験からいえば、事務量は増えても、これまでどおりの「帳簿控除方式」で計算は可能である。問題はそこではない。軽減税率の効果は、あったのかである。このことに触れた報道はみかけない。
しかし、次の点から、効果はないと思われる。
(1)農産物を考えてみよう。生産に必要な種子、肥料、燃料、資材のすべてが、軽減税率対象ではない。必然的にコストを押し上げる。梱包費や運賃も同様である。
(2)複数税率による事務費・販売費が増大する。レジ、システムなどの改修が必要である。これは、必ず、価格に転嫁される。
以上から、わずか、2ポイントの「軽減」で、効果があるとは考えにくいのである。このことは、消費税に関する知識があれば、わかっていたはずである。