第5回 お金は増えたのか減ったのか

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先立つものは「お金」

社長が、「経営は順調」「儲けが出ている」と感じるのは、自由に使えるお金があるときではないでしょうか。逆に「厳しい」「大丈夫かな」と感じるのは、お金が足りないときでしょう。往々にして決算書の「利益」と「お金」の増減が一致しないことは、大方の社長の実感することだと思います。
自由に使えるお金があればこそ、人を増やす、新規設備を購入する、在庫を増やす、社員や自分の給料もアップできるなどなど、いろんなことが自由にできます。また、必ずしも拡大方針でなく現状維持派であったとしても、使ったお金以上のリターンがなければ、いずれ行き詰まります。
つきつめれば会社の目的は、使った以上のお金を売上として回収することだといえます。

なんにせよ、先立つものはお金です。

 

お金の増減、その原因を教えてくれるキャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書は、ズバリお金が増えたか減ったかを表示し、その原因を表示しています。もっとうまい日本語に翻訳してくれればなじみやすかったのに残念です。
では一番簡単なキャッシュ・フロー計算書の見方、読み方の話しを始めます。

※損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書(財務三表といいます)は、すべて連動しています。ビジュアル試算表で、前月と今月を比べてみましょう。なんとなく関連がつかめます。

お金が増えたか減ったかを知る

まずキャッシュ・フロー計算書の一番下をみましょう。直接法でも間接法でもここは同じです。月次試算表メニューでも「決算・申告」メニューのキャッシュ・フロー計算書どちらでもかまいません。いずれも「期間」を指定することができますので、期間を選びます。

一番下は次のようになっています。

Ⅴ現金及び現金同等物の増加額

10

Ⅵ現金及び現金同等物の期首残高

20

Ⅶ現金及び現金同等物の期末残高

30

何も難しいことはありません。Ⅴは指定期間のお金の増減額で、Ⅵは期首(指定期間の期首=月単位で表示していれば月初)の残高であり、ⅦはⅥにその期間の増減額を加減し、期末(月末)のお金の有り高を表示しています。
「現金及び現金同等物」とは「お金」のことで、現金や普通預金・当座預金のことをいい、定期預金、積立金は含みません。
したがって、Ⅶは、試算表(貸借対照表)の、現金・普通預金・当座預金の月末残高と一致します。

※科目の追加など、初期設定を変更すると一致しないことがあります。これについては後で説明します。

大まかな増減の原因を知る

キャッシュ・フロー計算書は「営業活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」、「財務活動によるキャッシュ・フロー」と3区分されています。この合計(差引)が、「現金及び現金同等物の増加額」です。

 

Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー

40

Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー

-5

Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー

-25

Ⅴ現金及び現金同等物の増加額

10

Ⅵ現金及び現金同等物の期首残高

20

Ⅶ現金及び現金同等物の期末残高

30

とりあえず今の段階では、細かな項目は無視します。上の例では、営業活動で40円増え、投資活動で5円減り、財務活動で、25円減り、差引合計するとこの期間にお金が10円増えたことを表しています。
営業活動とは、売上、商品の仕入や人件費、経費、税金など、会社の日常的な営業に関係することすべてです。
投資活動とは、定期預金の預け入や取り崩し、設備の購入などです。これらはお金の出入りがあっても通常は損益計算に関係しません。
財務活動とは、借入や返済が代表例で、配当金の支払いもここに集計されます。

この3区分をみることにより、お金の増減の原因をおおまかにつかむことができます。

下記の例をみてください。

<事例1>

Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー

40

Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー

-5

Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー

-50

Ⅴ現金及び現金同等物の増加額

-15

Ⅵ現金及び現金同等物の期首残高

20

Ⅶ現金及び現金同等物の期末残高

5

少し極端ですが、営業活動で稼いだお金40円では、財務活動(返済金50円)が、支払いきれません。その分お金が減少しています。翌月もこの状態だとすると、何らかの資金手当が必要です。

<事例2>

Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー -50
Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー -5
Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー 40
Ⅴ現金及び現金同等物の増加額 -15
Ⅵ現金及び現金同等物の期首残高 20
Ⅶ現金及び現金同等物の期末残高 5

お金の増減額は事例1と同じですが、営業活動で、お金が減り、不足分を借入でまかなっている事例です。

<事例3>

Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー

50

Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー

-50

Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー

-15

Ⅴ現金及び現金同等物の増加額

-15

Ⅵ現金及び現金同等物の期首残高

20

Ⅶ現金及び現金同等物の期末残高

5

営業活動で稼いだお金が、設備購入等で消えてしまっている事例です。

まとめ

キャッシュ・フロー計算書をみると、一定期間にお金が増えたのか減ったかがわかります。また増減の原因がわかります。ここまでは前提です。
営業キャッシュ・フローがプラスであれば良い、マイナスはダメということにはなりません。

ここらが本題です。