税理士:「社長、けっこう利益がでてますね」
社長:「おかしいな、そんなに儲かってないよ」
こんな会話が今日もどこかで交わされているかもしれません。税理士のいう「利益」は損益計算書の利益であり、社長のいう「儲け」は、お金が増えることなのでしょう。損益計算書で利益があってもお金が増えていないとしたら「利益」はどこにいってしまったのでしょうか。実は、この答えは『キャッシュ・フロー計算書』にあります。
普段あまり気にしていないかもしれませんが、「ツカエル会計」の試算表画面を開くと「貸借対照表」「損益計算書」の右に「間接法キャッシュ・フロー計算書」と「直接法キャッシュ・フロー計算書」があります。
まず「間接法キャッシュ・フロー計算書」タブをクリックして開いてみましょう。
あまりなじみがないない表かもしれませんが、詳細は順次説明します。とりあえずここでは、各項目はお金が増減した原因とその金額を表していると考えてくだささい。
キャッシュ・フロー計算書でみる「利益はどこにいった」
間接法キャッシュ・フロー計算書には次のような項目があります。これらの項目に「利益はどこにった」の答えがあります。
売上債権の増加
税引前当期純利益(損失)金額 |
100 |
売上債権の増加(減少)額 |
-120 |
税引前当期純利益は損益計算書の「利益」のことです。注目すべきは間接法キャッシュ・フロー計算書の売上債権の増減額のマイナスです。
これは売掛金や受取手形が期首より増加しており当期の売上金額より実際に手にしたお金が120だけ少なかったことを意味します。
こうなる原因は主に二つ考えられます。一つは事業が右肩上がりでどんどん売上が増えているとき、もう一つは回収が遅れているときです。
この場合「利益は売上先に預けてある」ということになります。
在庫の増加
税引前当期純利益(損失)金額 |
100 |
たな卸資産のの増加(減少)額 |
-120 |
この事例ではキャッシュ・フロー計算書の「たな卸し資産の増加(減少)額」がマイナスになっています。
これは期首より在庫が増えていることを表しています。ここでも増加なのにマイナスで表示されますが、そういうものだと思ってください。
この場合利益の行方はハッキリしています。「利益は在庫になってる」のです。
設備投資(固定資産購入)
税引前当期純利益(損失)金額 |
100 |
有形固定資産の取得による支出 |
-120 |
この事例では「有形固定資産の取得による支出」がマイナスになっています。
これも利益の行方はハッキリしていますね。「利益は設備に化けた」ということです。
借入返済
税引前当期純利益(損失)金額 |
100 |
借入金の返済による支出 |
-120 |
よく見かける事例です。「借入金の返済による支出」がマイナスになっています。これは当期の借入金の返済額を表しています。
したがって「利益は返済に消えた」ということになります。
少しはキャッシュ・フロー計算書に興味をもっていただけたでしょうか。
第1回は「そうか、そういうものがあるのか」と思っていただければ十分です。これからゆっくり説明します。