「103万の壁」(その3)本当の壁とは

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東京新聞に「103万の壁見直しに期待」という記事があった(11月13日付)。コーセーの小林社長の言葉である。スタッフの多くがパートであり、103万を超えると所得税が発生するので、年末繁忙期になると、やめる人がいる。壁が見直されると、仕事を続けてくれるのでプラスになるという。
なぜ就労調整が起きるかといえば、「税金がかかる」からではなく「扶養」にならない(と信じている)からである。こんなことは、会社経営者は「百も承知」である。

103万の壁の現実

年収が103万を超えて、わずかに税金が発生しても、これは「壁」と呼ぶのは違和感がある。「壁」が存在するとすれば、給与体系にある。配偶者手当の支給基準が税制上の「扶養内配偶者」となっていれば、これは「壁」となる。「扶養」から外れると配偶者手当分だけ給料が減るからである。しかし、これは税制の問題ではない。

配偶者手当

税理士として、各社の給与をみてきたが、一度も「配偶者手当」がある給与をみたことがない。
現実はどうかと調べていたら、厚生労働省WEBに「企業の配偶者手当の在り方の検討」というページがみつかった。

企業の配偶者手当の在り方の検討

厚労省も見直しを推奨しているのであるから、給与体系に「配偶者手当」が存在する会社も、それなりにあるようだ。
それどころではない。国家公務員についは、人事院から「国家公務員の配偶者手当廃止」の勧告がなされている。どうやら本家本元は国家公務員給与のようである。

扶養控除(特定扶養)

税制に関係するところでは、「扶養控除」の問題がある。学生アルバイトである。企業の扶養手当の問題もある。実態としてどうなっているかは、わからない。いずれにせ「税」の問題ではない。

103万を超えると、親が、扶養控除の適用が受けられない。学生は「特定扶養親族」なので、控除額が63万減ることになる。しかし、大半の給与所得者の限界税率は5%か10%なので、親の税金負担増は、住民税を合わせても最大10万円程度である。計算すれば、それほど「働き損」ということはない。

これを当の学生本人の「年収の壁」とするのは、誤りである。しかも本人は「勤労学生控除」の適用があるので、130万までは、所得税は、発生しない。

ともかく、これだけ「年収の壁」がニュースになると、あやしげな専門家が登場するので、注意が必要である。