農業所得の申告者は35万人(申告所得税標本調査)より

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夏のコメ不足。新米が出回っても高い。農家の高齢化、担い手不足ということをよく聞く。
申告所得税標本調査の「農業所得」から、農家の現状をみてみたい。申告所得税標本調査(令和4年)によると、農業所得の申告者は、35万人である。「日本農業法人協会」によれば、農業法人が3万社ほどあるので、およそ38万が、農業事業者ということになる。

申告者区分別人数

申告所得税標本調査は、申告者を主たる所得を基準に「事業所得者」「不動産所得者」「給与所得者」「雑所得者」と区分し、その他の所得(譲渡所得等)が多い人を「他の区分に該当しない所得者」と5区分している。事業所得は「営業所得」「農業所得」に分類している。
農業所得の申告者は、上記申告者区分別に表にすると下記になる。

(表1)申告者区分別農業所得申告者
申告者区分人数
事業所得者154,980
不動産所得者81,774
給与所得者63,666
雑所得者39,763
該当しない所得者16,267
合計356,450

「農業所得」の申告者は、35万人あまりである。 うち事業所得者に区分された者が15万4千人、不動産所得が主たる所得の人が、8万1千人、給与所得が主たる所得6万3千人、雑所得が主たる所得の人も3万9千人である。

(グラフ1)申告者区分別農業所得申告者割合

割合でみると「事業」が主たる所得の人が、43.5%、「不動産」が主たる所得の人が22.9%、「給与」が17.9%となっている。

申告者区分別の所得金額

申告者区分別の農業所得申告者数、所得金額の合計、合計金額を人数で割った一人あたりの金額は、下記のとおりとなる。

(表2)申告者区分別人数、農業所得総額、一人当たり所得
申告者区分人数農業所得(百万円)一人当たり所得金額
事業所得者154,980523,2803,376,436
不動産所得者81,774-39,092-478,049
給与所得者63,66610,369162,866
雑所得者39,7637,293183,412
該当しない所得者16,267-5,071-311,735
合計356,450496,7792,932,928

「事業所得者」に分類された人の「事業」が農業とは限らないが、一人当たり所得は、337万円である。
その他の区分では、農業所得は赤字か、生計をまかなうほどの金額ではない。

所得者区分別でみると

申告所得者の区分別にみると、みえてくる農業(農家)の実情がある。

事業所得者区分の人

農業で生計を立てている人であり、人数は、15万4千人、所得の総額は5,232億円である。単純に割り算すると一人当たり337万円である。

(詳細不明のため事業=農業と仮定した)

特徴点

主な所得が農業であるグループである。人数構成比で、おおむね下位50%、中位40%、上位10%となるように、所得別に分類してみた。

(表2)所得階級別人数、一人当たり農業所得
所得階級人数一人当たり農業所得
下位74,1681,405,593
中位70,9234,161,400
上位9,88912,528,163

 所得階級は、農外所得を含む合計所得である。

下位は、所得300万円以下で人数構成比で、47.8%、中位は、所得300万円超1000万以下で、人数構成比45.7%、上位は、所得1000万円超人数構成比6.3%である。

25段階の人数構成比で15.2%と一番多い、300万円超400万円以下の所得階級でみると、農業所得は262万であり、農外所得が、かなりある。これは、すべての所得階級に共通する。

不動産所得者区分の人

不動産所得が主たる所得のグループであり、人数は8万1千人、このグループの農業所得の合計は、390億の赤字となっている。

特徴点

このグループの特徴は、25段階すべての所得階級区分で、農業所得が赤字であるという点である。

人数構成比で13.9%と一番多い300万円超400万以下の所得階級が、農業所得の赤字金額が一番多く、単純に割り算すると一人当たり40万円の赤字である。

給与所得者区分の人

給与所得が主で、農業所得の申告をしている人のグループである。人数は63,666人で、グループの農業所得は、105億のプラスと1億6千万の赤字で、差し引きすると103億円である。

特徴点

単純に所得階級別の農業所得総額を人数で割って、一人当たり農業所得を計算すると、500万円超600万円以下の所得階級が最大であり、31万6千円である。農業所得は総所得の5%程度しかない。

その他の所得区分の人

申告所得税標本調査では、上記以外の「雑所得者」と「他の区分に該当しない所得者」がある。
「雑所得者」に区分された人は、36,763人で、農業所得は、黒字分総額74億円、赤字分総額1億800万円である。
「他の区分に該当しない所得者」は、16,267人で、全所得階級で、赤字であり、総額は50億7千万円である。

ひとこと

長年税理士をやってきたが、一度も農業所得の申告書を作成したことがない。全国で農業所得の申告者はどれだけいて、所得はどうなっているのか、全く見当もつかなかった。

「標本調査」は実数ではないが、国税庁が全国の申告データから、母集団(全体)の申告内容を集計した信頼のおける統計である。
農業関係の統計は各種存在するであろうが、国税庁の「標本調査」が事業所得を「営業」と「農業」二区分としているので、所得面から農業の実情をかいまみることができる貴重なデータである。

農業所得の申告者が、35万人であり、これを主たる所得とする人(世帯)は、15万余りである。もちろん、輸入もあるが、この人たちが、食の主要部分を担っている。
所得の実態をみると、農業経営の危機や、後継者不足も現実のものであることがわかる。
統計では、個々の申告者の組み合わせは、不明であるが、不動産所得者に分類されたグループの農業所得は赤字であり、給与所得者に分類されたグループの農業所得は、とうてい生計をまかなえる金額ではない。